時にはこんな本も読んでみたくなる。
江戸時代の下町を舞台とした物語。最近読んだ本の中では、もっとも心に残った小説である。七不思議にからめて7つの短編から構成されており、いずれも江戸の情緒や人情がじんわりと伝わってきて、読み終えたときに「いい話だったな」と感じる。個々の話はそれぞれ異なるストーリーであるが、7通りの話がそろって1つの物語になっているという印象を受けた。私は1作目を読んだだけで、何なんだ・・この読後感は、と思った。胸にしみ入るとはまさにこのことだ。
著者の作品で、私が以前読んだことがある本は「魔術はささやく」「火車」「理由」といった代表作であり、人気作家だけに読まれた方も多いだろう。これらの本は、ほとんど非の打ちどころがないくらい優れた作品だと思った。緻密なストーリー展開、巧みな描写、女性ならではの柔らかな文体など、見事と言うしかない。それゆえに、こういう作家の時代小説とは一体どういうものだろうと、ずっと気になっていたのである。
「本所深川ふしぎ草紙」は、上に挙げた代表作ほどの強いインパクトは無いのだが、そもそもこれらの作品と比べることは無意味だろう。なぜなら、江戸時代と現代とでは舞台の背景がまったく異なるし、登場人物の心情やものの考え方もかなり違うからである。しかし、小説としてのジャンルはちがっても、宮部作品であることには変わりない。私はこの本を読んで、あらためて彼女の才能に畏敬の念を抱いた。
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僕も読みましたね~。
個人的には宮部みゆきでは、
現代ものより江戸時代もの(自分が江東区に住んでいるので特に本所・深川あたりの)が好きですね♪